尊厳死宣言公正証書(リビング・ウィル)
尊厳死宣言公正証書の3つのポイント
- 延命措置を求めない旨の意思表示。
- 公正証書の作成による方法と、日本尊厳死協会に加入する方法。
- 遺言書や任意後見契約とは別の書面で、意思表示が必要。
尊厳死宣言公正証書で、こんなご心配、お悩みに対応できます。
- 死期が迫った時、延命だけを考えた治療はしないで欲しい。
- できるだけ自然な形で死を迎えたい。
- 家族や医師に、医療に対する自分の考え方を伝えておきたい。
尊厳死とは
公正証書の作成か、日本尊厳死協会への加入する方法が考えられます。
「尊厳死」とは、現在の医学では回復の見込みがなく、死期が迫っている末期状態の人に対し、死期を延ばすだけの延命措置を求めず、人間として自然な形で死を迎えさせることをいいます。
その人が心身共に元気なうちに、尊厳死を希望しておくことを「尊厳死宣言(リビング・ウィル)」といわれますが、自己決定権の尊重をその根拠とします。
尊厳死の宣言は法律で規定されていることではありませんが、主に、下記の2つの方法が用いられています。
いずれも、事前に、もしくは必要が生じた際に、医師に提示することにより、医師に自らの意向を伝えることが可能となります。
- 公証役場で尊厳死宣言の公正証書を作成する方法。
- 本人が尊厳死宣言書を作成し、日本尊厳死協会に加入して、宣言書を預けておく方法。
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現状では、尊厳死の宣言書があったとしても、必ずしも尊厳死が実現されるとは限りませんが、日本尊厳死協会が平成23年に実施した遺族へのアンケートでは、「死亡届が出された1,283人のうち929人から回答があり、リビング・ウィルを医師に提示した767人のうち、リビング・ウィルが生かされたのは686人であった」とされています(同協会のホームページより)。
尊厳死宣言の公正証書
尊厳死に関する意思表示を、公正証書でしておく方法です。
尊厳死宣言の公正証書は、本人が公証人の前でその趣旨を述べ、公証人が聞き取り、その内容を公正証書にしてもらうもの(事実実験公正証書)です。
公正証書の原本は公証役場で保管されます。
医師にはその謄本を提示することで、自らの意思を伝えることになります。
★日本公証人連合会作成の文例
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本公証人は、尊厳死宣言者○○○○の嘱託により、平成○○年○月○日、その陳述内容が嘱託人の真意であることを確認の上、宣言に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。 |
第1条 |
私○○○○は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に以下の要望を宣言します。 |
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- 私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。
- しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしてもかまいません。
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第2条 |
この証書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ております。
妻 ○ ○ ○ ○ 昭和 年 月 日生
長男 ○ ○ ○ ○ 平成 年 月 日生
長女 ○ ○ ○ ○ 平成 年 月 日生
私に前条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるよう御配慮ください。 |
第3条 |
私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これら方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。 |
第4条 |
この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。 |
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公証役場で必要となる公正証書作成費用は、11,000円と、謄本代2,000円程度です。
なお、親族等に対し、尊厳死宣言を医師に伝達する旨の代理権を与える公正証書を作成する方法もあります。
尊厳死宣言書を、日本尊厳死協会に預ける方法
日本尊厳死協会に加入する方法もあります。
日本尊厳死協会は、本人の意思を尊重した終末期医療と、それに携わる医師の免責を保障する法制化に取り組む組織です。
令和5年3月現在で、公益財団法人日本尊厳死協会の会員数は、87,504人とされています(同協会のホームページより)。
入会希望者が、尊厳死の宣言書を協会に送付。
協会が尊厳死の宣言書を保管しておくと共に、会員証と原本証明済みの宣言書の控えが渡される扱いになっています。
★日本尊厳死協会作成のひな型
尊厳死の宣言書(全文)
(リビング・ウイル・Living Will)
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私は、私の傷病が不治であり、かつ死が迫っていたり、生命維持措置無しでは生存できない状態に陥った場合に備えて、私の家族、縁者ならびに私の医療に携わっている方々に次の要望を宣言いたします。
この宣言書は、私の精神が健全な状態にある時に書いたものであります。
したがって、私の精神が健全な状態にある時に私自身が破棄するか、または撤回する旨の文書を作成しない限り有効であります。
- 私の傷病が、現代の医学では不治の状態であり、既に死が迫っていると診断された場合には、ただ単に死期を引き延ばすためだけの延命措置はお断りいたします。
- ただしこの場合、私の苦痛を和らげるためには、麻薬などの適切な使用により十分な緩和医療を行ってください。
- 私が回復不能な遷延性意識障害(持続的植物状態)に陥った時は生命維持措置を取りやめてください。
以上、私の宣言による要望を忠実に果たしてくださった方々に深く感謝申し上げるとともに、その方々が私の要望に従ってくださった行為一切の責任は私自身にあることを附記いたします。 |
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(日本尊厳死協会のホームページから引用)
尊厳死の宣言に関する注意点
尊厳死に関する一般的な注意点としては、下記のようなことが考えられます。
- 法律で認められた制度ではないため、医師の裁量による部分があること。
- 尊厳死宣言を、任意後見契約の中に含めることはできないこと。
→任意後見契約とは別に、尊厳死の宣言書面を作成し、任意後見人に預ける方法を考えましょう。
- 尊厳死宣言を、遺言書の中に記載することはできないこと。
→遺言とは別に、尊厳死の宣言書面を作成し、家族等に預ける方法を考えましょう。
- 尊厳死は、積極的に生存期間を短縮する「安楽死」とは異なるとされています。
- 「延命治療」の解釈が、人によって異なる可能性があります。
→『大往生したけりゃ医療とかかわるな(中村仁一著)』では、「いっさいの」という表現ではなく、「具体的な医療措置に対する個別の意思表示が必要」であると、問題提起されています。
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尊厳死宣言公正証書に関してお手伝いできる当事務所サービス内容
1.ご相談から、公正証書作成まで
尊厳死宣言に関する公正証書の原案作成、公証役場との打ち合わせから、公証役場への同行を通じて、公正証書の作成をお手伝いします。
2.付随する書面作成
尊厳死宣言書を単独で作られるケースもありますが、遺言書や任意後見契約と共に作成されるケースがあります。
「この機会に」というご意向がありましたら、遺言書作成等のお手伝いも同時にさせていただきます。
成年後見のご相談は、堺市・三国ヶ丘の司法書士吉田法務事務所へ
司法書士吉田事務所では、成年後見制度を通じ、高齢の方、障害を持つ方、身寄りのない方等が、
安心して生活できるよう、法律面からお手伝いします。
<成年後見に関するサポート内容>
・法定後見申立前の相談。法定後見申立書類作成・提出。裁判所への同行。
・親族後見人の継続的サポート。
・任意後見契約前の相談。任意後見契約公正証書の作成サポート。
・財産管理等委任契約、見守り契約、死後事務委任契約、遺言書作成サポート。
・成年後見人(後見・保佐・補助)、遺言執行者への就任
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